漫画版機動警察パトレイバーの最終21-22巻はすごい。宿敵グリフォン/シャフトジャパン企画七課とのラストバトルなのだが、主人公泉野明に何らかの何かを託すキャラクターが誰一人いない。襲撃によって特車二課が制圧される場面が行き違いによって野明から切り離されており、同僚の太田や整備班のシバシゲオ、同班長榊、あるいは後藤隊長などから、「泉、頼んだぞ」という台詞がまったく出ない。
野明はまずそれまでの乗機、篠原重工社製イングラムではなしに、居合わせた同社新鋭試作機AVRを駆ってグリフォンと戦う。決戦前に新開発の機体を託されて乗り換えるのは騎乗型ロボット物語の有力な手法なのだが、このAVRはグリフォンに敗れ破壊される。AVRの貸与は同社宇垣専務からの、そして遡ればシャフトエンタープライズグループ極東マネージャーからのものである。ここは重要だ。ここで野明が勝つと、その勝利はAVRの搭載オペレーティングシステムHOSを通じての篠原重工-シャフトエンタープライズグループの業務提携折衝における広報イベントになる。この展開は退けられている。
巨大ロボットの出自、という観点でいうと、歴史的には、鉄人28号からマジンガーZ以来、主人公の父親あるいは祖父キャラクターがその開発者であるという設定が多い。これは、大状況として日本が明治以後ずっと重工業化しつづけてきたことから、かなり当然である*1。パトレイバーでは騎乗するのが野明で、指揮車担当の遊馬の父親が篠原重工の社長であり、1キャラぶん分離されている。第12-13巻で篠原重工の贈賄疑惑があるのだが、そのときそれに気を取られてミスするのは遊馬で、野明は、イングラムの性能はこれまで乗ってきた自分がよくわかっている、と、揺るがない。
AVRの敗因は丁寧である。AVRはまず、グリフォンに負けないまでも、そもそも組み合えない。AVRは実験機で、処理コンピュータを外部の管制車に搭載している。AVRはこの管制車をシャフト社の歩兵に制圧され、シャットダウンされて機能停止して負ける。ここで丁寧なのがグリフォン担当の技術者森川の解説で、「いまのあいつは司令部が全滅して身動きのとれなくなった兵隊みたいなもんですよ。」という吹出に、砲制圧下で「ここどこー?」と地図を開く歩兵のコマが描かれている。つまりスタンドアローンで勝てない兵隊ロボじゃグリフォンに勝てないという話をする。
「あのマシンは一機で完結してないんです!」
「情報処理系のほとんどを身体(ボディ)の外に任せていたんですよ!」
「大脳が身体の外にあるってわけか?」
野明はイングラムに乗りなおして勝つ。イングラム対グリフォン戦は、遊馬、後藤、南雲らによって観られているのだが、ここでも、泉頑張れという言葉がどこからも出てこない。
漫画版パトレイバーはすごすぎる。